「コードバンとはどんな革なのか?」



コードバンとは牛革やラム革でもヤギ革でもなく馬革です。

馬と言いましても、食肉用として少数生産されている農耕馬から採られるお尻の部分の革です。
又、革は食肉の副産物です。

皆様もふだん食べているのは牛肉や豚肉ではないでしょうか。
馬肉を食べる機会は少なくないですか。

実は、サラブレットやモンゴルの馬にもコードバンはございます。
しかしコードバン層が薄く、傷が多く、大きさも安定しないため使い物にならないらしいです。

この様にコードバンになる革は、選び抜かれた馬の副産物と言う事だけで、どれだけ希少なのもお分かり頂けるのではないでしょうか。

「革のダイヤモンド・革の王様と言われるコードバンとは?」



「コードバンとはどんな革なのか?」でも述べた通り、馬革の全体にコードバンは有るわけではなく、極めて僅かなお尻の部分にしかございません。

一般的な革は表皮部分を使用するのですが、コードバンの場合は厚い皮に覆われた馬の臀部の内側にある、2mmほどの単一層繊維を裏側から削り出すようにして採取されてます。 (シェービング)

表皮が薄く二層構造である一般的な皮と比べ、コードバンでは約2mmの厚さがそのまま単層構造となっているため、きめ細やかで強靭な革になるのです。

この強靭な繊維構造が、「革のダイヤモンド」と言われる大きな由縁ではないでしょうか。

「革の王様」と言わる由縁ですが、諸説色々とある中で店主個人の意見としましては、大きくひとつ経年変化(エイジング)にあると思います。
一般的な革の繊維構造は横向きに対し、コードバンは縦に繊維がはしっております。
それが屈曲した際に折り皺が出来にくく、長い年月とメンテナンスと共に、コードバン独特の美しく鈍い光沢へとなります。

革の希少性、他の革では出すことのできない光沢、深い色味、強靭な繊維構造、全てがかね備わって「革の王様」と言われるのではないでしょうか。

「幻の革、コードバンの起源について」

 

コードバンは発見された経緯や起源について明確には分かっておらず、何処で誰がどの様な目的で作ったのか謎に包まれております。
起源については、スペインのコルドバ地方のヤギ革に似ている事や、コルドバ地方で最初に製造された事が有力な説とされておりますが、
コルドバ地方はアルゼンチンにも有り、両国とも皮革産業で有名な国であるため発祥の地を断定する事ができておりません。


しかし、1960年代までヨーロッパではコードバンを製造していた事実があるので、発祥の地はスペインではないかと思われます。
又、コードバンを最初に見つけたのはタンナーの職人ではなく、精肉工場の従業員が肉を裁く際に偶然見つけ、
それをタンナーが皮から革へとナメしたのではないかと言うのが有力な経緯だと言われています。

つまりコードバンとは革の歴史の中でも謎が多く、神秘的な革だと言えましょう。
コードバンが「幻の革」と言われる由来には、単に希少性が高いだけでなく、こういった歴史的背景も含まれていると店主自身は思っております。



「コードバンが作られるまで」



原皮についてはフランスとポーランドから輸入しています。
それはヨーロッパ産の馬は馬体も大きく、上質なコードバンを含んでいる為だからだそうです。

又、あまり知られておりませんが、コードバンを作るにあたって、胴部分とコードバン(お尻の部分)を原皮の状態で2つに裁断します。

それは大きな理由として2つあります。

1つ目は革は副産物であり、コードバン以外の部分も製品として扱われるからです。
2つ目は先ほど述べた通り、コードバンは他の繊維とは全く異なるという事です。


コードバンと同じ時間、同じなめし工程を一般的な革にしてしまうと、革は固くなり使い物にならなくなります。

又、コードバンを鞣す事のできるタンナー(革の工場)は世界に5社しか存在しません。
その5社と言うのがアメリカのホーウィン社・日本の新喜皮革社・日本の宮内産業株式会社・イギリスのクレイトン社・アルゼンチンのロシナンテ社です。

では、何故世界に5社しか製造できないのかと言いますと、コードバンのように特殊な革を加工するのには複雑な製法を要するという事と、なにより手作業の業務が多いために技術を体で習得する事が極めて困難だと言うことです。

このような点で高い技術力を持つ新喜皮革社と宮内産業株式会社は、世界に誇る日本のタンナーとして注目を浴びているのです。
以上の通り、厳選された革を選び抜き、考え抜かれた知識と技術により最高級コードバンが作られるのです。